社員インフルエンサーって?新しい企業戦略のマニュアル【保存版】
近年SNSの流行により、多くの企業がSNSマーケティングへの積極的な取り組みが目立ちます。
この記事では、企業に就いている社員が企業や商品のPRを行うインフルエンサーとしてSNSで発信する「社員インフルエンサー」について、解説します。
社員インフルエンサーが企業にいるメリットや注意点、さらに実際に社員インフルエンサーを導入している企業の事例などをもとに、詳しく解説していきます。
社員インフルエンサーについて興味がある方や、これから社員インフルエンサーの導入を検討しているという方は、ぜひ参考にしてみてくださいね!
社員インフルエンサーとは
社員インフルエンサーとは、企業に属する一般社員が、SNS上でインフルエンサーとなって企業のサービスや商品をPRする人のことをいいます。
以前から、インフルエンサーの存在は多くのメディアで取り上げられ、注目されてきました。
しかし、最近では新たに社員インフルエンサーのSNSでの活躍が目立ち始め、有名企業でも導入されつつあります。
主にTikTok(ティックトック)やInstagram(インスタグラム)、Twitter(ツイッター)などのSNSを利用し、自社の商品やサービスの良さを一番理解している社員が、インフルエンサーとなって発信することでより正確で魅力的なPRができるといった狙いもあるのです。
また、総務省による「令和3年通信利用動向調査」によると、年々SNSにおける利用年齢層が拡大していることも、SNSマーケティングの重要性が上がりつつある要因の一つとも考えられています。
では、社員インフルエンサーが企業にいることで得られるメリットには、どのようなものがあるのか詳しく見ていきましょう。
社員インフルエンサーのメリット
企業のPR戦略に欠かせない社員インフルエンサーを導入することは、以下の5つのメリットが得られます。
- 商品PRのコスパ化
- 企業の知名度の向上
- ユーザーとの親密化
- 信頼性の高い情報発信
- 社員のやりがいとモチベの向上
商品PRのコスパ化
社員インフルエンサーは、SNSアカウントを無料でつくりスタートさせることができるため、従来の広告費用はなく初期費用等は一切かかることはありません。
また、フォロワー数が多くなると、一つの投稿に対してのユーザーの反応や拡散にも期待できるので、コスパを維持しながら有効的な活用が可能です。
企業の知名度の向上
SNSマーケティングの大きな特徴でもある拡散力を活かして、企業の名前そのものや商品・サービスの知名度を向上させることができます。
実際に、社員インフルエンサーの力によって知名度を上げ、万単位のフォロワーを獲得している企業も少なくありません。
また、企業側とフォロワーとの距離感が近いSNSのコミュニティを活かし、フォロワーのファン化を図ります。
ユーザーとの親密化
有名インフルエンサーとは違い、社員インフルエンサーは企業に勤める社員であり一般人。
あからさまに宣伝する有名なインフルエンサーに対して次第に嫌悪感を抱くユーザーも、社員インフルエンサーなら「企業の社員なのでPRしても自然」と捉えられる場合も多く、受け入れやすいのが特徴です。
信頼性の高い情報発信
SNSの発信やコミュニケーションを通して距離感を縮められるため、社員インフルエンサーの発信には信頼性が高いと感じられる傾向があります。
もちろん、企業のことに詳しい社員であることはフォロワーにとって安心材料であり、投稿内容や情報に対しての信頼度も上がるでしょう。
社員のやりがいとモチベの向上
SNSマーケティングにおいて、自身の考えや発信をすること自体や、そこから利益を出すという経験は社員のやりがいとモチベにも直結します。
企業の中の個人としての自分の成果と感じることができるので、達成感がより身に染みるものです。
社員インフルエンサーを導入する上で注意すること
社員インフルエンサーを導入する際にはメリットがある一方で、気をつけなければならないこともいくつかあります。
これから社員インフルエンサーを検討している場合には、以下の5つのことをしっかりと確認しておきましょう。
- 炎上リスク
- 社員のメンタルケア
- 社内の理解
- 引継ぎトラブル
- 長期的な視野が必要
炎上リスク
SNSを利用する上で、気をつけたいのが炎上です。
多くの人がSNSを利用している一方で、さまざまな考え方や捉え方があるということもまた、覚えておかなければなりません。
また、当たり前ですが、誰かに非があるような言い方や不快に感じるような投稿はNG。
炎上後も他のユーザーに炎上していることが拡散されてしまうので、企業のイメージは悪くなる一方です。
さらにフォロワー数の減少や信頼度の低下にも繋がってしまいます。
投稿する際は、二重三重としっかりチェックして内容的に大丈夫かどうか確認することが重要です。
社員のメンタルケア
SNS上の不特定多数の人に顔をさらけ出すことは、なかなかストレスに感じるもの。
投稿するだけならまだよいのですが、それに対してのコメントや反応はさまざまです。
また、中には心ないコメントをする人もいるので、メンタル面が心配でもあります。
企業側も、社員に任せきりにするのではなく、定期的に話を聞いたり運営方針や継続意識などを聞き取るなどして対応するとよいでしょう。
さらに、必要に応じて定期的なメンタルケアをしたり、社員インフルエンサーのチームとしての活動とするなどの連携が必須。
モチベを維持しながらも、孤立感を与えないようにすることも重要です。
社内の理解
SNSのコミュニティの性質上、仕事として行っている場合でも他の社員からしたら「楽しそうでいいな」という印象を持たれてしまいがち。
実際には、SNSを活用した企業のPRや運営は、とても努力のいるもので結果を出すために試行錯誤していますが、残念ながらなかなか伝わりません。
だからこそ、社内が一丸となってSNSを盛り上げるような雰囲気づくりが求められます。また、楽しく取り組める環境は斬新なアイディアや面白い発想がうまれることにもつながるのです。
SNSを盛り上げるためにも、社内全体における周知活動も大切にしていきたいですね。
引継ぎトラブル
社員インフルエンサーが社内での転勤や部署移動、退職などの際には引継ぎ問題が発生します。
場合によっては、アカウントとフォロワーを引き継がれずに企業側が損してしまったというケースも。
・企業のアカウントとして育てて、退職後も人を替えて運営の継続をしていくのか。
・個人のアカウントを利用し、そのまま退職後も個人に付与するのか。
このような内容も含めた規約を登用する時点で作っておくなどして、しっかり双方が合意したうえで進めていくと良いでしょう。
長期的な視野が必要
そもそも社員インフルエンサーの育成には時間がかかります。
たくさんの社員の中から社員インフルエンサーを見つけ出すところから始まるため、会社自体の意識改革が必要といえます。
また、PR投稿を始めたからと言ってすぐに効果が出るわけではないということをあらかじめ認識しておき、モチベをしっかり維持して取り組めるよう工夫していきましょう。
社員インフルエンサーを起用する際の4ステップ
社員インフルエンサーをを起用する際の流れには、以下の4つのステップがあります。
- インフルエンサーを決める
- 評価方法や手当を決める
- 社員インフルエンサーを公式アカウントで紹介する
- SNSの運用を始める
ステップ1:インフルエンサーを決める
まずは、社内のインフルエンサーとして起用する社員の選定から始めます。
インフルエンサーとして選ぶ基準には、主にある程度のSNSの知識を持っていることや流行のトレンドを抑えていることなどが挙げられます。
決める際は、社内でオーデションを行うなどして、適した人材を見極めることも重要になってきます。
また、社内だけで選んだり社員の育成に不安があるという場合には、社員インフルエンサーの育成に力を入れている会社に依頼するのもよいでしょう。
ステップ2:評価方法や手当を決める
SNSマーケティングをする際に大切になってくるのが、具体的な目標数字を掲げるということ。
例えば、評価する項目には、以下のようなものがあります。
- フォロワー数の増え幅
- リーチ数
- 公式サイトへの誘導ユーザー数
SNSマーケティンングを進めていく際に評価する項目が明確になっていることは、企業側が評価する指標にもなることはもちろん、社員自身も手応えや振り返りを実感できます。
また、社員インフルエンサーとしての個別報酬や手当は、必ずしも設定しなければいけないというわけではありません。
社員自身にとっても大きな経験となり、マーケティングの知識やノウハウを手に入れられるチャンスとも捉えることができます。
ステップ3:社員インフルエンサーを公式アカウントで紹介する
フォロワー側にとっては、事前に公式アカウントでの発表があることでスムーズに社員インフルエンサー自体の存在や発信を受け入れることができます。
また、はじめの印象はとても重要になります。不信感を持たれないようにするためにも社員インフルエンサーの紹介はしっかりと行うことをおすすめします。
ステップ4:SNSの運用を始める
ステップ1~3までの事前準備ができたら、いよいよSNSの運用をスタートさせましょう。
始めのうちは、投稿の一つ一つをしっかりと検討しながら進め、投稿後も専用ツールなどを用いた分析もしていきましょう。
また、社内全体で周知して盛り上げるためにも、定期的なミーティングを行い意見や情報交換をしやすい雰囲気づくり、アイディアの共有が重要ですね。
インフルエンサー手当の導入も⁈
SNSでの運用において、一定の基準を満たした場合に給料とは別で支給される「インフルエンサー手当」
企業によって規準は異なりますが、企業内の社員インフルエンサーとして活躍する個人に対して、このような手当を支給する企業があります。
ユニークな福利厚生を取り入れている具体的な企業の例として、以下の5社が挙げられます。
事例①株式会社パルグループホールディングス
レディースファッションだけでなく、メンズやキッズ、雑貨などさまざまなブランドを展開している株式会社パルグループホールディングス。
それぞれのショップスタッフの個人アカウントのSNSを使いブランドプロモーションを評価する「インフルエンサー制度」が導入されています。
内容は、SNSのフォロワー数に応じて、給与とは別に手当が支給されるという仕組みです。
また、年間で予算達成賞や新人賞など部門別に表彰される際にも、Instagram・WEAR・アプリフォロワーの増加数が高いスタッフに贈られる「インフルエンサーオブザイヤー」が与えられます。
これらの存在もまた、社員インフルエンサーのモチベとやりがいの維持につながるのでしょう。
事例②株式会社3Backs
https://twitter.com/rebirthlab1?s=11&t=jhKhfsWsi1vgE5RJgjv9SQ
東京都渋谷区に本社を構える株式会社3Backsは、社会人のインターンシップやキャリア転職支援サービスを行う企業。
2021年4月に社員インフルエンサーへの手当とする「スターシャイン(社員)手当」を新たに導入。
【内容】
Twitterのフォロワー数1000人以上であることや、以下の条件をクリアすると最大20,000円の手当が支給されるというもの。
- フォロワー数
- エンゲージメント数
- ツイート数
これらの基準を満たした社員が対象となります。
SNSでの発信が企業にとっても主流になりつつある現在、社員インフルエンサーの活躍が欠かせないものとなっているようですね。
事例③株式会社ナイスクラップ
https://instagram.com/niceclaup_official_?igshid=YmMyMTA2M2Y=
東京都渋谷区に本社を構える、婦人服ならびに関連雑貨などの企画・製造・販売を行う株式会社ナイスクラップ。
スタッフ募集の際には、ブランドの声を消費者に直接届けられる発信力の高い人材をとの考えから、インフルエンサー枠を用意。
内容は、SNSのフォロワー数が5000人以上の方に限り、特別な選考フロー・条件で募集。
さらに、フォロワーとのエンゲージメントなども考慮。
採用後の業務内容としては、店舗での販売や接客以外にも運営業務、SNSでのインフルエンサー活動などがあります。
給与面では、成果報酬などの各種インセンティブがあります。
事例④株式会社オンデーズ
https://www.instagram.com/owndays_jp/#
東京都品川区に本社を置くメガネ・サングラスなどを販売する企業である株式会社オンデーズは、2017年10月に「インフルエンサー採用」を開始しました。
インフルエンサーマーケティングにこだわるのには、2つの理由があります。
①自社の正しい理解と認知を深めるために行う「発信力の強化」
②やる気と自己アピールで無限に可能性を広げられる「社内カルチャーとのマッチング」
InstagramやTwitter、FacebookのSNSでフォロワー1500人以上の応募者には、ある一定の基準を満たして審査通過後、書類選考や面接をとばして社長面接に進むことができるというもの。
採用後も、社内インフルエンサーとして自社のPR発信をすることでインフルエンサー手当となる5万円が毎月支給されます。
基本の給料とは別に5万円の支給は、かなり大きな額ではあるものの、それだけ企業にとっての社員インフルエンサーの重要度が高いということがよく分かりますね。
社員インフルエンサーの導入するために決めておくこと
社員のインフルエンサー手当を導入する前に、以下のような運用ルールを設定しておく必要があります。
①アカウント運用目的とターゲットの決定
まずは、SNSのアカウント運用の目的とターゲットをしっかりと決めてから、社員インフルエンサーに知らせます。
また、インフルエンサー手当の基準の設定をし、それが満たされた段階で評価するという体制を作りましょう。
②KGIとKPIの設定
これはSNS運用のすべてにおいて言えることですが、KGIとKPIを細かく設定し、利益にどのくらい貢献しているかを定期的に確認するようにすることが必須です。
「KGI(Key Goal Indicator)」=重要目標達成指標
⇒最終目標。目標を達成するための「ゴール」。主に、売り上げや成約数、利益率がこれに当てはまります。
「KPI(Key Performance Indicator)」=重要業績評価指標
⇒中間目標。目標を達成するための「過程」。社員インフルエンサーに達成率を共有することで利益のアップにつなげます。
社員インフルエンサーとの達成率の共有は、利益の向上にもつながっていきます。
③炎上時の対処法のマニュアル化
SNS運用をおこなっている以上、炎上の可能性は少なからずあります。
もし炎上してしまったら…と想定して、あらかじめ炎上した際の対処マニュアルを作成しておくことをおすすめします。
これにより、的確にスムーズに対応できます。具体的にどのような対応をして、どのような謝罪をするのかなど、細かく決めておくとよいでしょう。
これらの運用ルールは全社員で共有し、必要に応じてアップデートするなど状況に合わせて変化させていくことが大切です。
社員インフルエンサーを実際に導入している企業の事例
最近では、多くの企業で社員インフルエンサーの導入が始まっています。
以下の4つの企業を例に、見ていきましょう。
企業①大丸松坂屋百貨店
https://instagram.com/100ka10_nozaki?igshid=YmMyMTA2M2Y=
大丸松坂屋百貨店は、「社員インフルエンサー」の構築を目指す「インフルエンサープロジェクト」を始動。
個性豊かで発信力があるという条件に合う上、本人の「やってみたい」という意欲が重なり、入社7年目の社員が起用されました。
コンセプトの内容は、「会社員が勤務中に、企業のオフィスでお菓子を爆食いする」といったもの。Instagram内で、「お菓子食べすぎ会社員」という名前でインフルエンサーとして活動しています。
初投稿から1ヶ月時点で、目標としていた3000フォロワーを大きく上回る4000フォロワー以上を獲得。その後YouTube、TikTokと活動の場を広げていきました。
ただお菓子を登場させるだけでなく、次々お菓子を食べていくという斬新な発想が多くの評価を得たようです。
その裏では、お菓子の魅力を最大限に伝えるため、編集には撮影の約6倍以上の時間を費やしているのだとか。まさに、努力の賜物ですね!
企業②大京警備保障株式会社
https://www.tiktok.com/@dkykeibi_tokyo?_t=8Zckrkicwrp&_r=1
地域の「安全と安心」をモットーに社会への貢献を実現する大京警備保障株式会社。
2019年に初めての投稿をして依頼、社員の工夫やアイディアが詰まったほのぼの投稿が話題をよんでいます。
登場する社員は、一見SNSとはつながりが薄そうなおじさま世代。
しかし、このギャップこそが世間から注目される理由でもあります。
SNSは若い世代のものという概念を良い意味で崩し、歩み寄る姿勢に捉えることができる投稿は、ほほえましい印象を与えてくれますね。
そんな社長を含めた社員の努力の甲斐あって、現在はフォロワー数25万人超えになるまでに成長しています。
こうした社員の活躍によって、企業の知名度はぐんと高まり、企業ブランディングにも成功したと言えるでしょう。
企業③バロックジャパンリミテッド
https://instagram.com/misato_muraoka?igshid=YmMyMTA2M2Y=
東京都目黒区に本社を置くアパレル商品等の企画・製造から小売り事業までを行うアパレル企業。
2010年ごろから、「ショップ販売員兼インフルエンサー」という名の肩書を導入し、社員インフルエンサーの育成にも力を入れています。
SNSのInstagram内でライブ配信を行い、自社の商品を分かりやすくPR。
フォロワーから書き込まれるコメントや質問にもリアルタイムでこたえていきながら、フォロワーとのコミュニケーションをはかります。
また、商品について知り尽くしている社員インフルエンサーだからこそ、信頼できる情報として素直に受け止めやすいといえるでしょう。
企業④株式会社ランクアップ
【企業アカウント】https://www.instagram.com/manara_japan/?hl=ja
オリジナルブランド「マナラ化粧品」の開発および販売を行う株式会社ランクアップでは、なんと社員全員がInstagram内で企業用アカウントを開設。
社員は一人一人自由なテーマで投稿する中で、自社商品の紹介やPRも行っています。
「あくまでも社員の日常がメインで、その中に自社の商品を混ぜながら紹介する」というスタンスであることがこの企業の特徴でもあります。
企業独自の社員インフルエンサー制度として、プロフィールからフォロワーがそのURLを介して購入した場合に、社員に成果報酬が付与される制度を導入。
また、施策期間中は1日15分までであれば、各自の社員アカウントに時間を当てても良いといったルールも。
このほかにも、施策開始ごとにチームを組んでリーダーが他メンバーの投稿を管理したり、週に1度30分のチーム会議が可能です。
さらに、投稿に使用する写真は会社が提供するなど、企業全体での積極的な
取り組みが感じられる社風です。
今後ますます社員インフルエンサーの育成にも力を
多くの企業でSNSの取り組みが盛んになっている現在。
これまでに注目されているインフルエンサーマーケティングから、さらに一歩先を進む「社員インフルエンサー」の存在は、まさに今後の企業戦略として大きく貢献することでしょう。
それと同時に増えてくるのが、社員インフルエンサーの育成です。
自社内でインフルエンサーを育てていくのか、インフルエンサーの育成に欠かせない知識やノウハウなどを外部から学ぶのか方法はさまざま。
どちらにしても、社員インフルエンサーだけでなく「社内全体で自社アカウントを盛り上げるぞ!」という雰囲をつくり、関心が持てるような環境を整えることが第一歩となるでしょう。